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ポケットの中にいつも少女

ポケットの中にいつも少女

雑誌1

雑誌1

愚直スタイリッシュ

(C)2001
マガジン・マガジン
マガジンマガジン社「小説JUNE」2001年8月号No.134
挿画 角田緑
2001年8月1日発行
T1114131080882
***あらすじ***
便利屋・朋野は女子高生・すみれにバージンをもらってくれという依頼をされる。
父の会社が経営不振で、売春してでも父を助けたいのだが、最初ぐらいは相手を選びたい…と言うのだ。
そのまさに捨て身の孝行心に火をつけられた朋野は、すみれの父を救うべく奔走を始めるが…!?
***感想***

  。・:*:・°'★,。・:*:♪・°'☆。・:*:・°'★,。・:*:♪・°'☆

 さて、花先生はJUNE3作目になるんですが、3作とも読んで気づいた事。JUNE掲載作の登場人物には、必ず何か疵 を負わせてるな、と。
 二見書房の方の作品や同人誌では、見られなかった傾向ですね。雑誌のカラーに合わせているのかしらん。

………

 熱血特集だけあって、朋野は熱い男です(笑)頼まれもしないことに首を突っ込んで、世間的には貧乏籤ながら、自分 の正義を貫いて、人生を充実して過ごしています。
 さて、疵ですが、勿論と言ってはなんですが、そんな朋野が重大な疵をしょってるわけもなく。
 上記のあらすじには出てきてませんが(爆)今回の疵だらけの人は朋野の相方、翠です。
 その翠の疵に、すみれの依頼が抵触する事から、朋野の人柄と過去の事件、それから2人の「愛とか恋とかじゃない 、だけど互いをなくしたら幸せになれない」関係が浮き彫りになってくるのですが…  本作は、非常にアイタタな感じです。よりによってこんな難しいところを…と。
 トラウマを扱った作品と言うのは、非常にイタイ、救いのないものか、おとぎばなしのように安易に、愛だけでなんとで もなっちゃっているものが多いように思われるのですが(少なくとも私の読んできた作品の中ではの話ですが)本作は 非常に中途半端。
 トラウマとなった事件から開放されてわずか一年後、フラッシュバック起こしちゃった直後に自らその事について語り 出してしまった翠ちゃんは、ちょっとヾ(・・;)ォィォィという感じでしたが、さりとて朋野の愛があるからもう大丈夫、なんてこ とではなく、先の見えない疵を抱えたままで、2人が恋愛以上の関係を築きながら、花先生の作品らしく明日に向かっ て少しずつ前進をしていっている様は、おとぎばなしとして読み飛ばすには重くて。

 翠ちゃんは、疵だらけながら非常に前向きな人です。ただ、その疵の大きさ故に、むしろその前向きさは痛々しく思え て…でも、可哀想だねって安易に泣くのは、どうも彼に対して失礼というか、なんか違う気がして、結局最後まで涙の一 滴も出てきませんでした。
 
 朋野に関しても、応援する気持ちよりも、最初はむしろ「おまえそんな気持ちで翠のそばに居て大丈夫か?」という感 想しか抱けなかったのですが、話が進み、彼の熱血が単なる正義感ではなく、また翠の疵を癒してやろう、などとおこ がましいことを考えているわけではけしてないことがわかるにつれ、すみれの科白ではないですが、彼に翠を託したい 、と思えるようになりました。
 朋野のモノローグ(嬉しすぎて泣けるぜ)には、こっちが泣きそうに。
 朋野にしろすみれにしろ、またすみれに対する翠にしろ、自分が相手にできる事の限界を知っており、自然体でそれ をするさまに、本当の優しさってこんなものかな、と考えさせられます。
 相手を癒そう、などと思っているうちは、真実の癒しは訪れないのじゃないか。
 必要なのは、相手を思いやる「自分の」気持ちではなく、相手が癒されるためには何が必要かを見極め、その為のフ ォローをすることなのかな。

 はは、いつもながら、無駄に穿ち過ぎなんだろうけどなあ。
 とりあえず、なんとも落ち着かない(話的には綺麗に終わってるんだけど)感じなので、も少し感想保留にしたいです。
 問題作ということで。続編、切に希望。
(読書日記2001/7/1より) 
愚直スタイリッシュ 2

(C)2001
マガジン・マガジン
マガジンマガジン社「小説JUNE」2003年2月号No.146
挿画 角田緑
2003年2月1日発行
T1114131020789
***あらすじ***
便利屋・朋野はパチンコ屋の呼び込みのバイト中、通りかかった主婦にぶつか ってしまう。  そのまま倒れてしまった主婦に付き添い救急車に乗り込んだ朋野だが、 病院で彼女がDV(ドメスティック・バイオレンス)の被害者であるかもしれないという話を聞いて…!?
***感想***
 熱血朋野とトラウマ翠ちゃんの愚直スタイリ ッシュ、待望の続編です。
 前作で、私的に問題作のラベルを貼らせていただいたこのシリーズですが、 続編読んで、「腑に落ちる」とはこういうことか、とばかりにストンと落ち着きました。
 今回の熱血朋くんのハートに火をつけた事件は、ほんの偶然から知り得たDVです。
 事が事だけに、前作の会社建て直しのようにすっきり解決、という訳にはいきませんが、朋としての最善を尽くしてい ると思えるし、 また朋の人となり、翠とのことも含めて、前作で不安だった部分がきれいに消えた感じです。
 一番あっ!と思ったのは、朋にとって、翠ちゃんの事は既に彼の傷も含めて「日常」となっているのだとわかった事で すかね。
 今回の事件も翠ちゃんの傷に抵触する訳なんですが、わかってて敢えて手を貸す。手を出さずにはいられない。
 翠ちゃんの事を「特別」(良い意味ではなく)と思ってたら、そんな事できないですよね。
 とんでもない殺し文句も吐いてるし(笑)
 翠ちゃんの方も、何がどうしたと言う訳ではないのですが、確かに変わってきています。
 彼の傷は、時間と自分が解決する問題であり、直接的に「朋野のおかげで」変わってきたのではないけれど(そこがミ ソ)、 癒される為の時間と環境を作り得たのは確かに朋野だからなんだろうな。
 まだまだ安定には程遠そうな翠ちゃんと、前途多難(笑)な朋野ですが、共に生きて欲しいと思います。

 今回のツボは、「最初のヒント」でした。

 そして今回も、とってもステキです、角田先生のイラスト!扉がね、ものすんごく私好みの色使いだったのですよ。
 切り抜いてパウチしたい…も一冊買ってくるか?
(2003/1/16) 


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